四国の
微笑みの
風景
四国をデザインしている人々
白石高啓さん(徳島県)
現在どんな仕事をされていますか?
(1)モニュメント:別子開坑300年歌碑(愛媛県新居浜市)
別子銅山が元禄4年(1691)開坑してより平成2年(1990)は300年。それを記念して住友金属鉱山(株)より依頼され、伊予の青石と住友金属鉱山(株)支給の銅を和紙風模様に鋳造(高橋鋳工場・京都市)し、第16代住友吉左衞門 友成家長の歌碑「この銅山を神とし仰ぎ幾代かも 掘りつぎて來しことの畏こさ」を創った。
設置場所は、煙突山の裾野、国領川を見下ろす大山積神社と別子銅山記念館の敷地内で、そこからは新居浜市内や海岸沿いの工業地帯、そして瀬戸内に浮かぶ四阪島が望まれる。ちなみに山頂の煙突は山根湿式精錬所跡。
(2)聖なる空間整備:四国霊場第五十八番札所 作礼山 仙遊寺 檀信徒会館等(愛媛県今治市)
「海抜250mにあり、自然環境と風光明媚な朝陽と夕陽が望まれるロケーション」を活かしながら、癒される空間と寺子屋的雰囲気の空間に、 宿坊・多目的スペース・庫裡・歩き遍路用温水シャワー付きトイレなどを計画した。施工は(株)大林組。現在、この寺から発信した「四国へんろ道文化」世界遺産化の会が登録にむかって進行中。
仕事では、どんなところにこだわっていますか?
・民俗学的思考と不易流行を均衡させ、試行錯誤しながらの持続的な環境デザイン。
・日の出の色彩豊かな感動的で雄大な緊張感。
・「間」の空間追求
これまでのJUDIの活動で面白かったものは?
瀬戸内しまなみ海道・風景学フォーラムが面白かった。
本四連絡橋尾道~今治ルートが1999年5月1日に開通して6ヵ月後、合併前の愛媛県伯方町とJUDI中国・四国ブロックのジョイントフォーラムを開催した。日本の新技術力による長大橋と、島人の生活環境変化との葛藤を垣間見た時、果たして行政やJUDIの役割はいかにあるべきかと、多くの刺激を受けた。
興味深い事例をおしえてください。
・四国霊場88カ所の遍路道
(歩き遍路体験と遍路道クリーンアップ作戦参加の過程で)
・吉野川河口の日の出
・眉山
・新居浜化学工場の装置群
・瀬戸内のしまなみ等
JUDI会員へのメッセージ
JUDI創立20周年、日本の環境デザインも緩やかに定着してきている。多様で柔らかな会員のコミュニケーションによって味わいのある豊かな環境が誕生してゆくだろう。四国においては、「四国へんろ道文化」世界遺産化の会がいち早く行動を起こして10年以上になる。聖なる景観はそれなりの規律が守られているが、他の巡礼道に比べ世界遺産登録・重要ポイントの文化的景観がよく問題視される。それらの問題点を再構築してゆけば、四国もこれからの環境に相応しい景観が生まれ、多くの人々に豊かなこころをはぐくむことが出来るのでは。
その中で岩手県平泉の文化遺産が2度目の挑戦で世界遺産に登録されるという明るいニュースが東日本大震災の被災された人たちを元気づけている。
大震災によって、 復興構想がイメージされはじめ、これまでの社会の形態や生活様式の大変革が始まった。東北の濃密な文化・民俗を大切にした構想が望まれる。その時、20年間の活動で蓄積されたJUDIの役割が求められるのでは。
白石高啓(しらいし たかひろ)
ゆにて設計事務所 主宰
四国をデザインしている人々 白石高啓さん:JUDI四国20周年記念事業