JUDI四国
20th

四国の

微笑みの

風景

四国をデザインしている人々

増田拓朗さん(香川県)

  1. 箇条書き項目 現在どんな仕事をされていますか?


一言でいうと緑化。


(1)香川県における緑化困難地の緑化

香川県の直島はアートで有名だが、北部にはハゲ山が広がっている。また、香川県には採石跡地や臨海埋立地などの緑化困難な場所が多く存在する。これら緑化困難地の緑化を成功に導くために、香川県の依頼を受けて緑化技術研究会を立ち上げ、緑化試験を行って、それぞれの場所に適した緑化手法を検討し、緑化を進めている。


(2)道路の緑化-緑豊かな樹冠と見通しのよい車道空間の両立-

高松市の中央通りのクスノキ並木は、戦後の復興のシンボルとして植栽されたもので、「無剪定で緑豊かに育てるべきだ」という市民と「交通安全のために車道に張り出さないように小さく剪定すべきだ」という交通関係者の間で剪定論争が繰り広げられてきた。調べてみると、このクスノキ並木の樹高は約10m、高さ3~4m程度で車道上に枝が張り出しており、交通安全の支障になっていることが伺えた。しかし、この状況状で剪定すると緑が貧弱になってしまうことも事実であった。

クスノキは樹高15~20mに成長する木である。ただし、根が浅いと大きくなれない。根の深さ1.5m以上必要である。調査してみると、根の深さは60~80cm程度で、その下は根が侵入できない土壌条件であった。幹線道路の中央分離帯なので限界はあるが、深さ1.5~2m程度まで土壌改良を行い、また、剪定の方法を工夫して、緑豊かな樹冠と見通しのよい車道空間の両立を図るようにした。


(3)栗林公園の景観保全

栗林公園は特別名勝に指定されている代表的な回遊式大名庭園である。高松市の中心市街地に位置しており、周囲は商業地域である。1980年代以降、高層ビルが建ち、公園の中からもそれが見えて景観を阻害するようになってきた。1990年、この問題の解決に向けて調査に取り組んだ。まず、公園内の植栽によってビルを遮蔽する(新たに築山を造り、その上に高木を植栽する)ことを検討したが、外部の要因(ビルの高層化)による平成の大改修は認められないと文化庁の許可が降りなかった。

この問題の根本的な解決には栗林公園周辺の建物の高さ規制が必要であり、周囲500mの範囲内の段階的高さ規制を提案したが、行政当局から、商業活動を阻害するような規制は好ましくないと否定された。

しかし、来園者、とくに外国人からは厳しい批判があり、また、2004年の景観法公布もあって、行政の認識も変わってきた。現在、栗林公園周辺地域の建物の高さ規制に向けて検討が進められている。


(4)ボランティア

森林整備のボランティア活動をやっており、そこをフィールドにして、小学校の総合学習(自然観察)のお手伝いもしている。小学生の方が大学生よりも熱心に目を輝かせて聞いてくれる(笑)。


  1. 箇条書き項目 仕事では、どんなところにこだわっていますか?


「あるべき所にあるべき緑を」っていうのと、「木に金かけるより土に金をかけろ」というのが、こだわりだ。

狭い場所に、ケヤキやクスノキ等の枝の張る樹種を植えても、大きく育った頃に剪定することになって、かえって評判が悪い。狭い場所には小さな木とか剪定しやすい木を植える方が良い。一方、大きく育てたい場所なら、根が張れるように広く深い植栽基盤をしっかりと整えておく必要がある。

植栽は、植えた瞬間ではなく、10年後、50年後を想定して計画する必要がある。明治神宮が良い例だ。逆に、ある運動公園の例だが、開園に間に合わせて、樹高20mもあるケヤキの大木を100本くらい、大金をかけて移植した例があるが、外国(特に欧米諸国)の造園家からは非常に評判が悪かった。苗木を植えて50年も経てば同じなのに、大金をかけて大木を移植するという姿勢は理解できないということだった。

アメリカに行ったときに、70歳ぐらいの造園家の家に招待されたことがある。その時、自宅の庭にある樹高30mぐらいの大木を指して「これは私が結婚してこの家を建てたときに2mの苗木を植えたものだ。40年でここまで育った」と自慢していた。木に金をかけるより土に金をかける方が、長い目で見てよい結果になる。


  1. 箇条書き項目 JUDI会員へのメッセージ


あまり、参加できなくてすみません(笑)。JUDIで山歩きというのも、楽しいかもしれません。




増田拓朗(ますだ たくろう)

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