JUDI四国
20th

四国の

微笑みの

風景

四国をデザインしている人々

大谷英人さん(高知県)

  1. 箇条書き項目 現在どんな仕事をされていますか?


私は、『まちづくり計画学(都市計画・生活空間計画・農山漁村計画)』を専門としている。『まちづくり』の計画とは、単に物的な〝もの″を造るのではなしに、〝もの″の中で、「どのような暮らしがあるのか」、「どういう暮らしをつくるのか」を考えることである。そして、『まちづくり』とは、そこに住んでいる人びとが自分自身の問題として「まち」に関わり、自分たちの手で未来に向けて、ハードだけではなくソフトを含むトータルな住みよい「まち」(環境)を「つくってゆこう」とするアクション(行為)であるといえる。

しかし、『まちづくり』への住民の参加が叫ばれてから、久しく、かつ、「まちづくりの主体は住民である」という一般的な考え方に、誰も異議をはさむ人はいないが、本当に住民が主体となって物事が決められている事例は、残念ながら日本では極めて少なく、むしろ、計画・事業が『突然に降ってわいたり、突然に押しつけられたり』が現状である。市民参画は、社会的要請だが、日本の場合、アメリカやイギリス、ドイツなど住民参加が進んでいる諸国と比較して、住民参加手続きが法律上極めて限定的な範囲にとどまっていること、日本の行政は住民参加の経験の蓄積の機会が非常に少なく、住民参加を成功に導く様々な方法や技術の開発がなおざりにされてきたことにある。

そこで、私の研究室では、学生と一緒に『まちづくりワークショップ(「まちワク」)』と呼ばれる方法で『まちづくり』における市民参画を進めている。この手法は、街に住む人々が、自分たちの環境をより良くしたり、新しい環境をつくるときに、皆で知恵を集めて考える方法である。この「まちワク」は、誰でも、プログラムに従い道具を使いながら、自分の住む身近な環境への提案をまとめることができる。また、この方法は、住民がグループで討議したり、作業したりしながら『ゲーム感覚』で『まちづくりマインド』を育てていくものである。今後、『住民参画のまちづくり』の充実のためには、これらの方法の実践と、その蓄積を図っていく必要がある。


事例:

・土佐山田町都市計画マスタープラン策定過程にける各種ワークショップとそのシステム化(2004年)

NPO実務者のための企画書づくりワークショップ(2005年)


こどもを対象にガリバー地図を用いての景観まちづくりワークショップ・小学校への出前授業(2006.2007.2008年)



県営住宅船岡団地全面改善事業のための計画づくりワークショップ・居住者対象(2008年)



防災計画のための『まち(地域)』ウォチイングワークショップ・高校生対象(2009年)



PCM手法を用いての香美市における知的及び精神障害者の自立居住計画づくりワークショップ・関係者の委員対象(2009年)



四万十町庁舎建設計画づくりワークショップ・審議会委員対象(2010年)


  1. 箇条書き項目 仕事ではどんなところにこだわっていますか?


建築学系の大学・大学院を修了し、東京にある幾つかのシンクタンクにて研究員を勤めた後、高知において(株)若竹まちづくり研究所という民間の都市計画コンサルタント会社を設立し、活動をしてきた。その後、大学に移ったのだが、大学は、教育・研究をするところだが、それを担保するものが現場での実践であると思っている。そこで、教育としては、大学内の講義だけではなく、学生と一緒に現場に出るように心がけている。また、研究では、その現場での課題を研究につながるようにしている。


  1. 箇条書き項目 JUDI会員へのメッセージ


四国支部のJUDI会員は、会員数も少なく、しかも、だいぶ高齢化してきました。会としては、若い人たちが入会してくれることがいいのですが、ただ、会員が多くなれば良いというものでもありません。また、若者が魅力を感じるものでなければなりません。そのためには、JUDI会員は、都市環境デザインのプロフェッショナルであり、会員個々の具体的な活動が重要です。ここは一番、老体に鞭打って、皆さんがんばりましょう。



 


大谷英人(おおたに えいじん)

高知工科大学システム工学群建築・都市デザイン専攻教授。


埼玉県生まれ。東洋大学工学部建築学科卒業、東洋大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程単位取得満期退学、都市環境研究所研究員、(財)日本開発構想研究所研究員、東洋大学工学部建築学科兼任講師、若竹まちづくり研究所所長を経て現職。専攻は「まちづくり計画学」。ワークショップ手法等を取り入れた「まちづくり手法」など、住民を主体とした「まちづくり」の計画論的・実践論的な研究に取り組んでいる。著書は、『まちづくり工作者宣言』(1997年、南の風社)『まちづくり雑記帳』(1999年、南の風社) 『まちづくりノート』(2005年、若竹まちづくり研究所) 『居住環境整備計画』(2006年、高知まちづくり支援ネットワーク) 『まちづくりを考える36の話』(2011年、高知まちづくり支援ネットワーク)など、多数。役職としては、日本建築学会学術推進委員、日本建築学会四国支部学術委員長、日本都市計画学会中四国支部幹事、公益信託こうちNPO地域づくりファンド運営委員会委員長、NPO法人高知まちづくり支援ネットワーク理事長、NPO法人高知こどもの図書館理事長、等。