歴史という価値
昔の構造物が今に残されているということは、様々の時代の多くの人々が、その美しさ(あるいは、その他の価値)を認めてきたということです。そうでなければ、どこかの時代で破壊されていたかもしれません。
また、実際に多くのものが破壊されてきました。

ファブリチオ橋(テヴェレ川 ローマ イタリア)紀元前62年 Ponte Fabricio Tevere, Rome, Italy

美しい構造物は、時代の変化とともにその役割を終え、無用の長物となってさえ、その美しさゆえに、破壊されずに残されてきました。これらはもはや本来の用途では使われませんが、「文化遺産」としての価値を持っています。

熊本県砥用町・霊台橋 現在は、上流の鉄橋に役割をゆずっている。

建築物の場合は、外観を残して内装を変更するなどの手法により、再利用されることもあります。

北海道函館市・Bay Hakodate 古い赤煉瓦倉庫を改修して、ショップとしている。

建築・土木構造物は、その基本的な性質として「長寿」という特徴を持っています。ほとんどの建築・土木構造物は30年以上の寿命を考えて設計されています。
従って、それらを建設するときには、少なくとも30年以上の未来の美的価値観に耐え得るだけの意匠を持つ必要があります。

長崎県長崎市・オランダ坂

しかし、近年の土木構造物は、「文化遺産」としての価値を初めから放棄しているような意匠のものが見受けられます。構造物を造る場合には、未来の人々がそれを文化遺産として認めてくれるようなものとする必要があります。

東京都台東区・首都高速道路


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高知工科大学工学部社会システム工学科 重山陽一郎 shige@infra.kochi-tech.ac.jp