Outline of デザイン教育Workshop 2009

河川のデザイン教育について考えます

 河川のデザイン教育は、大切だと思うのですが、実際にそれをやろうとすると、色々と困難に直面してしまいます。手強いのです。このWorkshopでは、河川のデザイン教育を困難にしている理由を考え、それを解決する方策を探りたいと思います。

河川は広くて大きくて総合的で手強い

 河川は、狭い意味では堤防と堤防の間にある、水が流れている場所ですが、実際に河川をデザインする場合は、流域全体の事を考えなければなりません。「流域を考える」ということは、海から山頂までの陸地全部を考えるということになるので、とにかく広くて、それだけで大変です。
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 また、河川をデザインするときには、洪水対策や親水公園だけでなく、田畑の灌漑も、水力発電も、渇水対策も、都市計画も、下水処理も、蛍も、鮎も、漁師さんの生活も考えなければなりません。極めて総合的で全部考えていると身動き取れなくなりそうです。

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河川には人も動物も植物もいるので手強い

 建築をデザインする場合には(特にそれが初歩的な教育の場合には)、その空間にいる人間の安全性や快適性について考えます。一方、河川の場合は人間よりも自然の動植物が生きていく場所としての意味合いが強いので、人間も動物も植物も居心地の良い空間をデザインする必要があります。そして、これらはしばしば対立する関係に見えてしまいがちで、折り合いを付けるのが難しいのです。

河川は形が変わるので手強い

 河川は、水が多いときもあれば、少ないときもあり、その時々によって様子が異なりますし、季節によっても、魚が産卵したり、樹木が落葉したり、人間の子供が川で泳いだりして、様々に変化します。
 また、洪水の度に川の地形が変わるので、昨日まで草が生えた河原だった場所が、突然、深い川底になっていたりするのです。河川のデザインでは、水の流れと力を考え、水の力による変化を許容し、予想しなければなりません。

河川は直線も平行線もないので、模型やスケッチが手強い

 河川は建築と違って、直線も平行線もなく、水平面も垂直面もありません。そのため2点透視図でスケッチを描くことが難しいですし、スチレンボードで模型を作ることも難しいですし、3D-CADでモデリングすることも難しいです。
 また、建築空間の賑わいを表現するには、人を数多く配置することが有効ですが、豊かな自然を表現するためにはどうすればよいですか?途方に暮れてしまいますよね。
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教育を実践してみます

 上記のように、河川のデザイン教育はかなり難しいのですが、これらの課題に対する解決策を、いくつか用意してあります。今回のWorkshopでは、高知工科大学において、実際に河川の設計演習を行いながら、解決策の有効性と限界を考え、また、新たな課題の発見と改良によって、河川のデザイン教育の発展に結びつけていきたいと思います。
 そして、いずれは、日本中の(世界の?)河川のデザインが、より良いものとなっていくことを目指しています。