2050年には日本の総人口の約2割減少する反面、実に総人口の3人に1人が65歳以上の高齢者となる"超高齢社会"が到来する。
『平成15年度 高知県住宅需要実態調査結果報告』によると、高知県の総世帯数は2010年をピークに減少すると推計されている。一方で、一人暮らしする65歳以上の高齢者世帯数は年々上昇する傾向にあり、約20年前と比較すると2005年度の高齢単身者世帯数は1985年度の約2倍となっている。総世帯数に占める65歳以上の単身世帯数の割合が年々増えているのである。高知県における65歳以上の単身者の持ち家率は78%、借家率は22%となっている。つまり、高知県では高齢者の居住形態として、持ち家での一人暮らしが大変多いことが分かる。
大抵の高齢者は住み慣れた地域でできる限り長く暮らしていきたいと考えている。二世代で同居している者や市営・民営のシルバーハウスに入居している者、子供が独立し夫婦のみで生活している者、それぞれの状況に合わせて様々な居住形態をとっている。その中でも持ち家で一人暮らしする高齢者が占める割合が大きい。一人暮らしできるだけの健常でありながらも、彼らはいつも"独り"暮らしの不安と隣りあわせである。そこで今回、一人暮らしに不安を覚える高齢者が集住する、リビングホームとデイサービスを併用した単身高齢者用集合住宅を提案する。遠くない未来に迎える超高齢社会はもとより、現在において早急な整備が求められるのは高齢者のための住宅供給であろうと考えられる。
住宅は鉄骨3階建てである。そのうち、一階部分を共有部分に、2・3階部分を居住部分に分別する。居住部分の個室には簡易キッチンと洗面、トイレが完備され、食事・洗濯・入浴(介助が必要な者のみ)・清掃は補助サポートを受ける。食事は施設に通ってくる職員や業者が用意したものを一階で取ることができる。また、地域住民も気軽に利用できるように1階の共有部分は開放し、近隣の高齢者は自宅に住まいながら喫茶店・レストラン代わりに通い、自宅では味わえない広々とした風呂を利用してもらえる。高齢者が住み慣れた土地で心身に見合ったサポートを受けながら、2、3階にプライベートスペースを確保しつつ、1階のパブリックスペースにふらりと散歩がてらに立ち寄り、足を休め、茶を飲み、団らんを楽しむ交流の場となってほしい。
制作者:高橋奈央