幾何補正


 衛星リモートセンシング画像等は,そのままの状態では地上座標と対応がとれていない.リモートセンシング画像における多くの座標系は,ライン方向が軌道方向となっている.地上データとの比較をする場合には,幾何補正によって原画像の座標系を地上座標に変換しなければならない.そのためには,地上基準点データの作成,幾何補正と再配列という手順を踏む.ここではIDRISIにおけるその手順について解説する.


基準点データの作成

  • 幾何補正は,基準点データを用いて実行される.この画像を見て解るように基準点データは,地上(地図上)のある点と,それと対応する原画像上の点の情報である.つまり基準点データには,地上基準点の地上座標と原画像の画像座標とが対となってたくさん納められているものである.これらたくさんの基準点を用いて座標変換式を最小二乗法によって計算し,座標変換式にしたがって,画像が生成されるのである.この基準点データをIDRISIではcorrespondence fileと呼んでいる.まず,この基準点データの作成法について解説する.
  • 「Data Entry」メニューの「Edit」を選択する.すると「EDIT」ウィンドウが開く.
  • 「File type to be edited」:基準点データなのでcorrespondence fileを指定する.
  • 「File name」:基準点ファイル名(新規ファイルとなる.既存のファイルと重複しないように注意.)
  • すべてのパラメータを入力し,「OK」ボタンを押せば基準点データの入力画面が現れる.
    • 一行目には,基準点の数を入力
    • 二行目からは,基準点のデータ.
      • 画像座標X 画像座標Y 地上座標X 地上座標Yの順で入力する(c,rは利用しない).
      • なお,座標値と座標値の区切りはスペースを使う(スペースの数は幾つでも構わない).タブは使えないので注意すること.
    • すべての基準点を入力後,「Save」ボタンを押してから「Exit」で終了する.
  • 注意
    • 基準点データは,地上座標で整備されている地図画像と原画像とを表示しておき,画像の中から対応点を捜し,両画像の座標を記録してから作成すると効率が良い.
    • 基準点の配置が偏らないよう,広範囲から抽出するよう心掛けること.
    • Linear (線形変換)の場合,最低でも6個の基準点を入力すること.


幾何補正と再配列

  • 基準点データを作成後,このデータを用いて幾何補正・再配列を実行する.
  • 「Reformat」メニューの「RESAMPLE」を選択する.すると「RESAMPLE」ウィンドウが開く.
  • 「Type of file to be resampled」:幾何補正するデータ形式を指定する.ラスター画像は「image」,ベクトル画像は「Vector」となる.
  • 「Input file」:幾何補正前のファイル名
  • 「Output file」:幾何補正後のファイル名(新規ファイルとなる.既存のファイルと重複しないように注意.)
  • 「Reference System」:利用する座標系,日本の平面直角座標系はサポートされていない.この場合はとりあえずPlaneを用いる.なお,UTM座標系はサポートされている.
  • 「Reference units」:データの単位.日本では通常meter
  • 「Unit distance」:距離の単位.1mならば1,10メートル単位なら10.
  • 「Mapping function」:幾何補正に用いる変換式
    • Linear:線形変換(回転,拡大,縮小,ねじれに対応)
    • Quadratic:二次変換(複雑な変換に対応)
    • Cubic:三次変換(非常に複雑な変換に対応,但し多くの基準点が必要)
  • 「Resampling type」:再配列に用いる内挿式
    • Nearest neighbor:最近隣値(エッジは保持)
    • Bilinear:線形内挿(エッジがなまる)
  • 空間情報のパラメータを与える.
    • 「Minimum X」:幾何補正後の地上座標の最小値(X)
    • 「Minimum Y」:幾何補正後の地上座標の最小値(Y)
    • 「Maximum X」:幾何補正後の地上座標の最大値(X)
    • 「Maximum Y」:幾何補正後の地上座標の最大値(Y)
    • 「Columns」:幾何補正後の画素数(X方向)
    • 「Rows」:幾何補正後の画素数(Y方向)
  • すべてのパラメータを入力し,「OK」ボタンを押せば幾何補正のための計算が始まる.
  • 変換式の計算が終わると誤差の状況を報告してくれる「Resample」ウィンドウが現れる.
    • Total RMS Error (平均2乗誤差)の値をみて,1以内かどうかを確かめる.1以上の場合は,誤差が小さくなるよう調整しなければならない.
    • Residual error for each point は,各基準点における残差を表している.残差の非常に大きい点については,まずその基準点データを計算の対象から外して見る.そのためには基準点をクリックし,その後Omit a point をクリックすれば計算対象外となる.この例では5番目のデータの誤差が大きい.このデータを対象外とし,再計算(Recalculate)させたものが,これである.それでもなお,RMSが1以内とならない場合は,基準点データを取り直すことが必要になる.
    • Total RMS Error が1以内となれば,「OK」ボタンを押して再配列を開始さす.再配列終了後,幾何補正されたデータが表示される.