室内環境デザイン

空間作りの楽しさと室内環境の快適さの両立を目指します。

空間作りの楽しさと室内環境の快適さの両立を目指します。


 この講義は本学で最初の建築設計演習であるとともに、その建築の室内環境を向上させる基本的技術をも設計に取り入れるという、建築デザインと建築環境工学の魅惑的かつ先駆的なコラボレーションです。全国的にみても現在のところあまり例をみないユニークな試みです。建築デザイン部門は渡辺菊眞が、建築環境工学部門は田島昌樹が担当します。まずは、建築デザイン部門の模様を紹介しましょう。演習課題「小さなすみか01」の選抜作品発表会と講評会を題材にして説明していきます。この演習は独特なステップを踏んで建築作品をつくりあげていきます。まず、学生のみなさんには5m×10mの平面、高さ5.5mの切り妻家型のコンクリートボックスが渡されます(あくまで設定で実物を渡すわけではありません(当然ですが))。この箱には穴も何もあいていません。中は漆黒です。これでは住むどころか入ることすらできません。そこで、この箱に穴(窓)をあけ、部屋を分節し、自分だけのお気に入りの住まいに改造しなければなりません。ただ、ここで改造がうまくいってもそれだけでは住まいにはなりません。敷地や周辺環境がないからです。次には与えられた広い領域から自分のお気に入りの場所を選びだし、そこに家を設置します。もちろん、お気に入りの場所を見つけて、そのあと、そこにあった住まいとして家を作り込むという手順でもオッケーです。こうしてようやく、自分だけのお気に入りのすみかができるわけです。今回の「小さなすみか01」では、このように自分の本当に好きな空間を自由につくりあげることが目的となります。ただし、トイレ風呂やキッチンなどの最低限の水回りの設置は義務づけています。

選抜作品の発表会の様子

 課題の成果物として、1/50の模型と、図面やパース、設計主旨などまとめたプレゼンボード(A1サイズ1枚)を作成せねばなりません。実はこの設計演習は学生にとって初の設計演習です。自分が設計した建築の模型を作ったり、図面を引くのもほぼ初めてです。製図や模型製作の基礎を学習する意味もこの講義は担います。自由に住みたい空間をつくることが主眼とはなりますが、適当につくればいいってものではありません。まずは初期条件たる、家型ボックスの空間的魅力を把握し、それを十二分にいかした設計にする必要があります。この家型、屋根勾配は45度。それゆえ低いところはとても低いのですが、中央部では高さ5.5mまでのびあがり、この箇所には2階が設置可能です。ただし、うまく設置しないと、空間をいたずらに狭く区切ってしまいます。なかなかに悩ましいカタチです。この家型空間のポテンシャルを知るために学生たちはまずは紙模型をスケッチモデルとしてつくり、それを切ったりはったりして、造形の変化や開口の効果を確認します。そうした過程を経てようやく魅力ある家になっていくわけです。


自然エネルギーの利用や断熱性について学ぶ

 「小さなすみか01」の室内環境を向上させるために、基本的な建築環境工学と具体的に導入できる技術を学びます。自然エネルギーとして利用できる『風』、『太陽』をそれぞれ、通風、日照と日射として、どのように室内環境の向上を図るか、どのように省エネルギーにつながるかについて学びます。また暖冷房のエネルギーを最小化させて、さらに温熱環境の向上を目的とした断熱や日射遮蔽などの技術は、省エネルギー基準の基準値と比較し、「小さなすみか02」ではどのレベルを目指すか検討します。


自分の設計した住宅についてコンセプトを再確認します

 講義中に学んだ新しい知識をもとに、自分の設計した「小さなすみか01」について再考します。これまでの設計で足りなかったことは何か、これからどんな技術を取り入れるか、について友人と議論をします。更にどんな技術を導入するか、どんな室内環境にしたいか、は複数名のグループに分かれて教員の評価やアドバイスを受け更なる改良を加えます。


住宅で消費されるエネルギーについて学びます

 建築環境工学の目的の一つは「快適な室内環境を最小のエネルギーで実現する」ことです。現在の日本の住宅におけるエネルギー消費や、どんな用途でエネルギー消費が大きいのか、また省エネルギーを達成するためにどのような技術を用いることができるのかを学びます。技術によっては、大幅にエネルギー消費を削減できるものや、エネルギー消費に与えるインパクトよりも室内環境の向上や居住者の快適性の向上に資するものもあります。


トレース

 住宅における通風の手法や日射遮蔽などについて、室内環境の向上に配慮された技術が導入された住宅の断面図などのトレースを行います。このトレースで学んだ技術が上手に反映された最終図面が提出されることもあります。たとえば通風や昼光利用を細かにコントロールできる格子が組み込まれた引き戸を採用し、通風量や夏至・冬至の太陽高度との関係を丁寧に示した図面です。また通風については、その経路とともに十分な通風換気が得られるための開口部の面積も検討されています。